着物買取の価格について

なかなか知る人の少ない着物の価格や相場の現実について専門家の知見をお知らせします。

当ページをご覧いただいている方の中には「着物を売りたい」とお考えの方もいらっしゃると思います。

着物は見る人間によって価値が大きく変わるものです。

なかなか語られることのない着物の価格や相場の現実について、専門家の観点からポイントをお知らせします。

お売りになる前にぜひお読みください。

着物の買取価格に相場は存在しない。

誤解を恐れずに言えば、着物の買取価格に相場は存在しません

一般的な検索で辿り着くことができるウェブサイトやブログでは、着物の画像と買取価格の例が所狭しと並べられていることが多く、目にされた方も多いと思います。

買取の写真に着物の買取価格と作家名や「友禅」や「小紋」などといった言葉が踊っていることでしょう。

しかしながら、これらの写真と価格は、あくまでも買取価格の一例であり、あなたや他のお客様にとっては役に立たない情報かもしれないのです。

着物は、買った当初に数十万円していた物でも、買取ができないものや数千円の買取価格になってしまうものがあるからです。

ではなぜ、着物の買取価格に相場が存在しないのでしょうか。

これには以下のような複数の要因があります。

  • 年代や作家によって評価が大きく異なるから。
  • 中古として流通する着物の需要と供給の問題。
  • 着物の保存状態。

年代や作家によって評価が大きく異なる点については後述します。

中古として流通する着物の需要と供給の問題についてですが、査定をご依頼になるお客様が「着ないし、いらない」とお考えの着物でも、その1枚をとても熱心に探されているお客様がいらっしゃいます。

誰もが名前を知っているような有名な生地でなくとも、着物を探されているお客様にとって人気のお品には、比較的高い値段がつくこともあるのです。

また、その逆に素材がウールやポリエステルであったり、喪服や汚れのひどいものは値段がつくことは、ほとんどありません。

加えて、着物の保存状態も重要です。

天然素材は虫が食いやすいため、桐たんすに防虫剤を入れて保管されているケースがとても多くございます。

特に虫食いのリスクが高いのがウールで作られた着物です。

反物の絹も虫が食ってしまうことがあるのですが、絹の着物の場合、最も多いケースが「変色」です。

変色してしまった着物は、元には戻せないため、価値にも少なからず影響いたします。

また、着物専用の防虫剤を利用していない(洋服用の防虫剤を使いまわしておられたりするケース)では、防虫剤の薬品が着物を痛め、変質させてしまうことが往々にしてございます。

長い間お召しになられていた着物は直射日光に晒され色が落ちていたり、収納されたまま長い年月を経過したものはカビや変色のリスクがございます。

20年以上経過している場合には、保管してあるプラスチックの部分が溶けたように変形してしまっていたりもするのです。

こうした様々な状況をクリアーした上で初めて「高額」と言われる買取価格が実現するのです。

しかしながら、インターネットにはこうした情報をお客様にお伝えせずに「着物高価買取」の文字を見かけることがございます。

実はこれにはあるカラクリが存在するようです。

着物買取でお客様との接点を作りたい一部の買取業者。

大きく「着物高価買取」と書かれている業者さんのウェブサイトは数多くあります。

もちろん、丁寧に査定し高価な買取を行っていただける業者さんが多いことでしょう。

しかしながら、実際に訪問したお客様に伺うと「着物の他に貴金属やお酒、絵などもありませんか?」と言われました、というお話を伺うことがあります。

一部の業者が、着物買取を依頼してきたお客様に対して強引に金品を買い取るようなことをしているというのです。

いわゆる「押し買い」と呼ばれるこのような相談が国民生活センターに年間6,000〜8,000件も寄せられているようです。

着物への愛情が無いばかりか、強引に金品を奪い取るような業者には注意しなくてはなりません。

さらに、一部の着物買取業者の現場査定員は、本当の着物の価値が分からない例もあると聞きます。

最近では呉服屋さんでさえ、着物の価値が本当にわかる人が少なくなっているな、と感じますので、着物に触れる機会が少ない方であれば、なおのことかもしれません。

こうした査定員は、着物は一律で◯千円などのような「マニュアル」に沿って形式的に買取を行うようです。

着物を査定しているように見えても、汚れのチェックなどにとどまっているのが実情なのです。

私どもは、具体的にこれらの業者の名前を把握しているわけではありませんし、特定の業者に対してクレームを申し上げているわけではありません。しかし、私どもがびっくりするような安い見積もりを出されているケースを見ることがあるのです。

現代では、着物の価値がわかる人間はどんどん減ってきています。日本古来の和装文化が途絶えてしまうという危機感を、てまり屋は強く持っています。

着物買取を専門に行う私たち、てまり屋は貴金属や骨董品の査定は全てお断りしています

着物の価値をお客様に正確にお伝えする上で判断していただきたいからです。

これは、着物本来の価値をきちんと判断し、後世に伝えていくために他なりません。

本当の価値は、実際に見ることで初めてわかる。

例えば「写真をご覧いただいて、価格を教えていただけませんか」というお問い合わせをいただくことがございます。

しかし、多くの年月を着物を観て過ごして参りましたが、着物の価値は「見る」だけでなく、手触りや匂いなど五感を使って初めて判断できるものだと断言します。

素材の技術が高まるにつれ、最近では絹と全く見分けのつかないポリエステルの着物もございます。昔の着物のような柄や装飾を施している場合も多く、パッと見ただけでは判断できないことがとても多いのです。

しかし、こうした着物でも私どもは、触れてみれば瞬時に見極めることが可能です。

また、てまり屋は100年以上前の着物から現在まで全てを正確に査定することができます。

「正確に査定」とは、時代だけではなく作家や生地がどのようにして作られたのか、刺繍などの装飾の種類や、当時の着物の流行などの文化的な背景まで丁寧にお伝えした上で、買取価格をお伝えすることができるのです。

さらに、お召しになっていた方の人となりを着物から感じることもできます。

例えば、母親の着物を整理されるとのことでお客様のご自宅に伺った際に、査定をしてみると、多くの着物が、私どもも唸るような、知る人ぞ知る呉服店で仕立てられたものだとわかりました。百貨店の外商さんからではなく、長い年月、実際に呉服屋に足繁く通った様子が伝わり、本当に着物がお好きな方だったのだなあと感じたのです。

そこで、ご依頼のお客様に「本当にお好きな方だったのですね。これは老舗の呉服屋で仕立てられたものですよ」とお話すると「何もそうしたことは聞いていなかったのに、なぜわかるのですか? 母親のことを着物を通してこんなにも分かるものなのですね。」とおっしゃっていただけました。

ただ単に「査定する」のは、専門家であれば誰でも出来るかもしれません。

しかし、そこに時代背景や持ち主の人となりをお知らせすることで「自分で大切にして着てみよう」と思っていただけるかもしれません。

こうした情報は「価格」だけであれば見過ごされてしまうもの。

着物に対しての愛情を広くみなさんに知っていただくきっかけにしたいという思いがあります。

お客様が判断する上で大切なのは、買った値段ではなく「証紙」です。

着物の証紙の画像
様々な証紙

ここまでお読みになって「結局、専門家に依頼しなければならないのか」とお感じになる方もいらっしゃることでしょう。

しかし、着物の専門家でない方でも判断できるポイントがあります。

お客様が判断する上で重要なのは「証紙」です。

これらの証紙からわかることはとても多くございます。

購入時の値段は、あまり参考にならないのですが、一般的な査定では、この証紙が大きな意味を持つこともあるのです。

証紙がお手元にあれば、必ず保管されることをお勧めいたします。

(私どもでは、証紙がなくても判断することが可能ですし、どの生地で誰が作ったのか、ということを正確にお知らせすることも可能です)

ここまで、着物の価格や相場についてお知らせしてまいりました。

一番大切なのは「本当の価値」を知った上で、お客様が「ご判断」いただくことです。

価格だけではない情報をお客様にお伝えした上で、ご判断いただくことと、金額だけを見てご判断いただくことでは、大きな違いがございます。

てまり屋は査定の目利きや金額に自信を持っております。

着物文化を後世に伝えるため、ぜひ当社の査定にご協力いただければと思います。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。